相続はいずれは誰にでも訪れるもの。しかし、人生でそう何度もあることではありません。
相続の手続きは複雑なものもありますが、自分でできるものもあります。
遺産が少なかったり相続人が1人しかいないなど、状況が複雑でない場合は自分で手続きを進めることが可能です。
ここでは、相続放棄をする場合に必須の「相続放棄申述書」を提出する流れをご紹介します。
この記事を読むことで相続放棄をするときの流れを掴むことができます。
相続放棄は申述までの期限が短いので、手続きの流れを正しくつかんで確実に進めましょう。
ただ、相続はその人ひとりひとりによって状況が異なるため、一遍通りの対策では不十分なこともあります。
相続放棄をする場合は慎重な判断が必要な場合もあるので注意が必要です。
不安がある方は専門家に相談してみるのもよいでしょう。
相続放棄をするべきか?
まず、そもそも相続放棄をするべきかどうかを検討しましょう。
それには遺産を正しく把握することが重要です。
- マイナスの財産がプラスの財産よりも確実に多い
- 借金が多くてとても肩代わりできない
- 絶対に手元に残しておきたい家や土地などの資産はない
上記のような場合に相続放棄は有効です。
相続放棄をすると最初から相続人でなかったことになるので、全ての債務の返済義務から逃れることができます。
しかし、同時にどのような資産も相続することができなくなりますので注意が必要です。
制度の概要についてはこちらをご参照ください。
相続放棄について
相続放棄をするべきか?判断に迷う場合は専門家に相談してみましょう。
西宮市相続相談センターでは、小さな疑問でも専門家が直接お答えしますので、お気軽にご相談ください。
相続放棄申述書は自分で書ける
相続放棄をすることを決めたら、相続放棄申述書を書いて家庭裁判所に提出します。
この相続放棄申述書は書く項目が比較的少なく、項目もわかりやすいのでご自身で提出することも可能です。
手続きを自分で進めてできるだけ費用を抑えたい方は、書き方を調べてみましょう。
裁判所からも書き方のひな形が提供されています。
参照:裁判所ホームページ-相続放棄申述書の書式の記入例(20歳以上)
参照:裁判所ホームページ-相続放棄申述書の書式の記入例(20歳未満)
相続放棄申述書の記入項目をひとつひとつ丁寧に解説した記事を公開していますので、ご自身で挑戦する方はこちらを参考にしてみてください。
【これならわかる】相続放棄申述書の書き方
相続放棄申述書提出の流れ
相続放棄申述書を提出してから、相続放棄が承認されるまでの流れを具体的に解説します。
相続放棄をするべきかどうかの検討
さきほども述べたことになりますが、まずここが重要です。
相続放棄をすることによって今の家に住めなくなるなど、思いがけない事態にもなりかねません。
慎重に判断しましょう。
必要書類を準備する
提出に必要な書類を準備します。
相続放棄に必要な主な書類は以下の通りです。
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
- 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
- 収入印紙800円分(申述人1人につき)
- 連絡用の郵便切手
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本 等
被相続人との関係により、必要な書類が異なります。
相続放棄申述書を入手する
相続放棄申述書は裁判所に取りに行けば、印刷したものをもらえます。
また、インターネットでダウンロードすることもできますので、インターネット環境があれば簡単に手に入れることができます。
裁判所に取りに行く方法
家庭裁判所が近くにある方は、直接取りに行くのもいいでしょう。
提出先は亡くなられた方の住民票の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
必ず管轄の裁判所でもらうようにしましょう。書き損じたときのために何枚かもらっておくと安心です。
管轄の裁判所はここから調べることができます(裁判所ホームページ)
ダウンロードする方法
インターネット環境があれば、PDFを裁判所ホームページからダウンロードすることができます。
家庭にプリンターがない場合は、PDFデータをUSBなどに保存して、コンビニのプリントサービスで印刷することも可能です。
参照:裁判所ホームページ-相続放棄申述書の書式のダウンロード(20歳以上)
参照:裁判所ホームページ-相続放棄申述書の書式のダウンロード(20歳未満)
相続放棄申述書を記入する
書式に沿って必要事項を記入します。
詳しい記入方法はこちらをご参照ください。
項目ひとつひとつを丁寧に解説しています。
【これならわかる】相続放棄申述書の書き方
管轄の家庭裁判所に提出する
必要書類を用意したら、家庭裁判所に提出します。
提出前にコピーを取っておくと安心です。
提出先は被相続人の最後の住所地(住民票上の住所)の家庭裁判所を管轄する家庭裁判所です。
管轄の裁判所はここから調べることができます(裁判所ホームページ)
兵庫県西宮市の方の場合、管轄する家庭裁判所は神戸家庭裁判所ですが、実際に手続きをするのは家庭裁判所の各支部になりますのでご注意ください。
亡くなられた方の最後の住所地が西宮市の方は、神戸家庭裁判所の尼崎支部が提出先となります。
郵送か、直接家庭裁判所に持参しても提出可能です。
こちらで詳しい提出先を確認できます(神戸家庭裁判所ホームページ)
相続放棄申述書を提出した後の手続き
相続放棄申述書を提出して終わりではありません。
最後に「相続放棄の受理書」を受け取るまで、気を抜かずに手続きしましょう。
また、債権者に督促をされた場合などに、相続放棄をしたことを証明する書類は「相続放棄受理証明書」です。
これは申請しないともらえないので、必要な方は注意してください。
相続放棄の照会書に回答する
相続放棄申述書を提出したら、たいがいの場合は裁判所より「相続放棄の照会書」が送られてきます。
内容は提出した内容の確認であることがほとんどです。
特に難しいことはありませんが、質問内容を正しく理解できずに間違った回答をしてしまうと、手続きが滞ったり最悪受理されない場合もありますので慎重に書きます。
照会書に書かれている項目は裁判所によって異なる場合がありますが、おおむね以下のことについての回答を求められます。
- 被相続人の死亡を知った日付
- 把握している遺産の内容
- 生前の被相続人との関係
- 相続放棄が自分の真意にもとづくかどうか
特に、「被相続人の死亡を知った日付」は重要です。
相続放棄申述書と同じ日を記入します。ここで提出前にとっておいたコピーが役立ちます。
相続放棄をすることが真意でないなら、相続放棄は認められません。
「真意にもとづきます」と記入しましょう。
たいていの場合は正しく記入していれば問題なく認められますので、間違わないように書いてください。
相続放棄の受理書
相続放棄の照会書が受理され、正式に相続放棄が認められれば、家庭裁判所から「相続放棄の受理書」が送られてきます。
これは正式にあなたの相続放棄が認められた証拠となりますので、大切に保管してください。
相続の受理書の到着でようやく相続放棄の手続きは完了です。
相続放棄申述受理証明書を取得する
相続放棄が正式に認められたことを対外的に証明するには「相続放棄申述受理証明書」が必要な場合があります。
これは、家庭裁判所に相続放棄したことを証明してもらうためのものです。
債権者からの支払い督促があった場合には、受理証明書を提出することによって、それ以上の請求がされることがなくなります。
また、他の相続人が不動産の登記をする場合や銀行に対して手続きをする際に、相続放棄者の受理証明書が必要なことがあります。
この場合は手続きをする人が受理証明書を取り寄せることができますので、必ずしも相続放棄した人が提出する必要はありません。
手続きの流れは以上の通りです。
相続放棄申述書の提出前の確認
ここからは注意点についていくつか紹介します。
申述書が書けたら、家庭裁判所に提出します。
申述書を書くことに気を取られて、他の確認事項をおろそかにしてしまい受理されない、なんてことのないようにしっかり確認しておきましょう。
必要書類を全て入れる
申述書はもちろん、戸籍謄本などの添付書類も必要です。
下記の2つは必ず必要です。
- 申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票(又は戸籍附票)
被相続人との関係によって他に書類が必要な場合がありますので確認してください。
提出先を確認する
提出先は、被相続人が亡くなった時に住民登録をしていた住所を管轄する家庭裁判所です。
裁判所の住所はホームページから調べることができます。
不安な場合は裁判所に問い合わせするのが確実です。
管轄の裁判所を調べる(裁判所ホームページ)
最終確認
提出する前に、以下について確認してみてください。
スムーズな承認のために漏れなく提出しましょう。
- 申述書は漏れなく、正しく記入されていますか?
- 申述書に収入印紙は貼ってありますか?
- 申述書に印鑑は押してありますか?
- 必要な書類は揃っていますか?
- 切手は必要分同封していますか?
- (郵送の場合)宛先は正しく記入していますか?
相続放棄申述書こんな時どうしたらいい?
申述書提出にあたり、細かい疑問が出てくることもあるかと思います。
ご自身で手続きされる方によくある疑問をまとめましたので参考にしてください。
印刷するときは両面印刷でもいい?
インターネットからPDFをダウンロードした場合は印刷時に両面印刷をすることもできますが、できるだけ片面で印刷しましょう。
「両面印刷は受け付けられない」という規定はありませんが、大切な申請書類ですので、よほどの理由がない限りは片面印刷で提出します。
Word(ワード)で編集したい
一部の裁判所では、書式をWordで提供しているところもあります。
自分の地域を管轄する裁判所のホームページにWordの書式が提供されていれば、それをダウンロードし使用することができます。
ただしWordで提供されているところはあまりないので、PDFを印刷して手書きするのが無難です。
書き間違いをしたら?
訂正をした場合は、下記間違った箇所を二重線で消して訂正印を押せば大丈夫です。
郵送は書留がいい?
大切な書類がたくさん入っていますので、普通郵便ではなく書留やレターパックなど、追跡できる方法で郵送しましょう。
代理で書くことはできる?
本人が書くことができない場合には、代理で別の人が書くことができます。
相続放棄申述書の提出に不安がある方は専門家へ相談を
相続放棄申述書の記入は難しくない場合がほとんどですが、説明をすると注意事項が多く「めんどくさい」と感じる方もおられるかもしれません。
また、状況によっては記載事項に十分注意する必要があります。
相続放棄の申述は基本的には1回しかできず、受理された後に取り消すこともできません。放棄するかどうかの判断や手続きは慎重に行いましょう。
西宮市相続相談センターでは無料相談を受け付けておりますので、自分の場合は相続放棄をした方がいいのか、など疑問にお答えします。
少しでも不安がある場合は、近くの専門家に一度相談することをおすすめします。