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相続と遺産分割の違い
まず、相続と遺産分割の違いについて簡単に触れておきます。
「相続」とは、死亡によって親などの親族から財産を受け継ぐことを指します。 「遺産分割」とは、相続人が複数いる場合に、誰がどれくらいの遺産を受け取るのかを決定することをいいます。
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遺産分割協議はいつまでに行う?
遺産分割協議とは、遺産をどのように分けるかを相続人全員で話し合うことです。遺産分割協議の期限は特に決まっていないため、いつ行っても問題ありません。
しかし相続放棄手続きは3ヶ月、相続税申告は10ヶ月以内にしなければならないため、遺産分割協議も早めに行うことでその他の手続きがスムーズになります。
また、不動産登記を届ける際や金融機関の手続きで遺産分割協議書を提出する場面があるので、早めに行わないと手続きが進まないこともあります。
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遺産分割をしないとどうなる?
前述のように、遺産分割協議書はあらゆる手続きの際に必要です。
遺産分割協議を行わないと遺産分割協議書は作成できませんので、たとえ遺産分割に期限がないといってもいつまでもしないわけにはいかないのが現状です。
遺産分割をしなくても、相続税申告は10ヶ月以内に行い相続税を支払わなければなりません。遺産分割が終わっていないと誰がどれくらい税金を負担するのかで問題になる可能性があります。
遺産があり、相続人が複数いて、有効な遺言書がない場合や遺言書の通りに分割しない場合は遺産分割を行う必要があるといえるでしょう。
遺産分割をしないことで費用がかかるケース
相続税の申告期限までに遺産分割が行えないと、いくつかの相続税の特例が使えなくなります。
特例が使えないと、控除できるものもできなくなってしまうため、本来不要な納税が必要になってしまいます。
また、遺産分割ができていないことで不動産などの名義変更をせずにそのままにしている場合があります。名義変更ができていないと、その不動産を売却する際にすべての相続人の同意が必要になります。相続人が多いほど手続きが煩雑になり、費用も多額になるケースもあります。
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遺産の分割方法
遺産を分割する際、遺言書の通りに分割する「指定分割」と、相続人全員で相談し決定する「協議分割」の2種類があります。
さらに、指定分割の場合はその遺言書が有効なものであることも重要です。有効な形式で作成されたものでなければ遺言書としての効力がないため、必ずしも内容に従う必要はなくなります。
もし有効な遺言書があれば、故人の意思を尊重し遺言書の内容が優先されます。しかし遺言書の内容通りに分割すると不都合が生じる場合があります。相続人全員が遺言書の内容と違うかたちで遺産分割することに同意している場合は、協議分割により遺言書と異なる分割をすることが可能です。
■遺産分割の方法
遺言書に従う場合「指定分割」
指定分割とは、遺言書の指定内容に従って遺産を分与することです。
遺言書を書くことで、被相続人が遺言で分割の方法を定めることや、分割方法を弁護士などの第三者に委託することができます。
また、財産の種類だけを指定する方法や、個別で財産を指定する方法もあります。相続財産の一部だけ指定されていて、残りの財産について何も指定がない場合は、その財産については、相続人の間で協議して分割することになります。
相続人全員で話し合う「協議分割」
協議分割では、相続人全員の話し合いによって分割方法を決定します。一般的に、遺言書がない場合は協議分割により分割方法を決めることになります。
そしてその話し合いのことを遺産分割協議といいます。
協議分割は相続人全員の参加と合意が必要となるので、一部の相続人が欠けている場合や、一部の相続人の意思を無視した協議を行った場合は、その協議は無効となります。
なお、相続人全員の合意が得られるのであれば、たとえ遺言が存在し、その遺言と異なる分割となっていたとしても、協議分割の内容を優先します。
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遺産分割協議
相続人が複数いる場合、遺産は全員の共同相続財産となります。
その共同で相続した相続財産を具体的に誰にどのように分けるかを話し合うのが「遺産分割協議」です。
協議が成立したら、決定された内容を記録した「遺産分割協議書」を作成します。
相続人の数だけ作成し全員の署名・押印をして各自1通ずつ保管することになります。
相続人全員が参加しなければ無効になります。
遺産分割協議には、相続人全員が参加しなければなりません。一人でも参加していない人がいるとその協議は無効になりますので注意しましょう。
法定相続分により遺産分割を行う
遺産の分割割合を決定する際は基本的には法定相続分により決定します。
法定相続分では、被相続人との間柄によって法律で分割割合が決められています。もちろん、相続人全員の同意があれば法定相続分に縛られず分割割合を決定することができます。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書は、遺産分割協議でまとまった内容を正式に記録しておくものです。
遺産分割協議書は絶対に作らなければないという決まりはありません。しかし、作らなければならない場合があります。
相続による不動産などの所有権の移転登記をする際には、添付書類として遺産分割協議書が必要です。また、金融機関への提出を求められる場合もあります。
書類として必要なだけでなく、内容に関して後々争いにならないように証拠書類として作っておくことをお勧めします。
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4つの遺産分割方法
もし相続財産が現金や預金であれば簡単に遺産を分割することができます。しかし土地や建物などの不動産が遺産に含まれている場合は簡単に分割することができません。そのため、不動産の相続は、相続人の間で揉める一番の原因になりやすいのです。 そこで、土地などの不動産が含まれている場合の具体的な分割方法として、4つの方法があります。
遺産分割の種類
現物分割
遺産そのものを現物で分ける方法です。現物分割では、各相続人の相続分を均等に分けることは難しく、相続人間の取得格差が大きくなることもあります。その際は、その差額分を金銭で支払うなどして代償を付加します。
換価分割
遺産全部を売却して現金に代えて、その現金を分割するという方法です。
現物をバラバラにすると価値が下がる場合などは、この方法が採られます。
代償分割
遺産の現物を1人(または数人)が受け取り、
その取得者が、相続分に相当する現金をその他の相続人に支払うという方法です。
共有分割
遺産を相続人が共有で所有する方法です。
共有名義の不動産は、この後の利用や売却などに共有者全員の同意が必要です。遺産分割の話し合いがまとまれば、後でもめないために必ず遺産分割協議書を作成しておくようにします。
遺産分割協議は基本的にやり直しができません
遺産分割協議は、成立した後にもう一度遺産分割協議をやり直すことが原則として出来ません。ただし、無効、取り消しの原因となる正当な理由があれば、一部または全面的にやり直すことができます。
やり直しの際に、思わぬ税金が発生する可能性もありますのでご注意ください。
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遺産分割をスムーズに終えるには
遺産が預金や現金だけでなく、土地や建物、株など簡単に遺産を分けることができない場合がほとんどです。
相続人が一人なら問題ありませんが、複数人となるとより複雑になり問題も起きやすくなります。また、状況によりどのような分割方法が適しているのかも異なります。
遺産の調査、相続人調査、最適な分割方法の検討、遺産分割協議書の作成や相続税申告などは専門家に依頼することで手間や時間を大幅に節約することができます。少し費用はかかりますが、より確実で安心な近道となるでしょう。
比較的複雑でない場合は、もちろんご自身で手続きをすることも可能です。疑問点がありましたらいつでもご相談ください。
お話を聞いているうちに大きな問題点が見つかり、そこから専門家へ依頼することで問題を回避することができたケースもあります。
相続手続きは期限があるものもありますので、お早目の対応が節税の鍵となります。
もし期限が迫っている場合は一刻も早く専門家へ相談されることをおすすめします。